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【みんなの説】親がいないと子は育たない(TOY) コンテンツ

 
 
 
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みんなの説
ハンドルネーム:TOY
カード種類:多種類
記事タイトル:親がいないと子は育たない

「このカード3000円だって!普通より高く売れたねお父さん!」
 まるでテストで100点取ったように喜ぶ。その一言が、自分にはあまりにも衝撃的だった。


 あなたは、自分がTCGを始めた時のことを覚えているだろうか。自分が始めたのは
小学校低学年の時だったと記憶している。当時は、決められたお小遣いで、なんとか
デッキを組んでいた。誰しも、手持ちのお金と相談しながらカードを買ったという経験
があるだろう。大人になってから始めた人も、カード1枚に1000円を出すということに
最初はためらいを覚えた人は多いのではないだろうか。(もしあなたがカードゲームを
プレイしたことがないなら、これも何かの縁。後半だけでも読んでいっていただきたい)

 自分が小学生の頃は、よくフリーマーケットを利用していた。今でこそレアカードに
高い値を付けてきれいに陳列する人もいるが、当時は基本的にノーマルカード10円。
そこから、強いカードや好きなカードを探して買う。月々のお小遣いが最高で600円だった
自分には、これが一番の買い方だった。中学生になり、月に1000円以上もらえるように
なると、100円を超えるレアカードも買えるようになった。また、行動範囲が広がったことで、
フリーマーケットだけでなく、カードショップの1枚10円コーナーにも行けるようになり、
週末は毎週のようにカードを漁っていた。その後もカード仲間に恵まれ、いつしかカードを
仕事にしたいと思うようになり、今ではリサイクルショップでカードの買取と販売の仕事をしている。
 

 自分が買取カウンターで仕事をしていたある日のこと、男性の親子がカウンターに
やってきて、新弾のレアカードを10枚ほど売りに来た。10分ほどで査定が終わり、カード
それぞれの額を提示した。いくつかのカードは、父親が「相場より安いな。このカードはキャンセルで
お願いします。」とおっしゃったのでお返しした。ここまではよくあること。しかし、売るカードと売らない
カードを吟味している父親の脇で、お子さんはこう言った。
「このカード3000円だって!普通より高く売れたねお父さん!」
強烈だった。小学生に専門外のカードの相場知識で負けたことはまだいい。目の前の年端も
いかない少年が、カード相場に精通していることその自体にショックを受けた。
 

 インターネットが普及した今、子供や初心者でも強いデッキやカードは調べれば簡単に分かる。
そして、それがどれくらいの値段で取引されているのかも、同じくらい簡単に調べられるだろう。
しかし、それでいいのだろうか。それは子供のためになることなのだろうか。小学生がカードを売って、
売るカードはレアカードで、それがどれだけのお金になるか熟知していて、売って得た3000円をそのまま
子供に握らせるのは、果たして子供のためになるのだろうか。
 

 話が前後するが、自分が小学生の頃、カードゲームといえばデュエルマスターズか遊戯王だった。
しかしある時、新たな遊びがやってきた。ムシキングだ。当時のムシキングといえば、連日テレビに
取り上げられるほどの人気だった。また、ムシキングの流れを汲むアーケードカードゲームは多い。
それほどまでに世の中に影響を与えたゲームだったが、自分は一度も遊ぶことはなかった。


 理由は単純で、コストパフォーマンスが悪いと感じたからだ。例えば、TCGで40枚のデッキを組むとして、
1枚10円なら400円だ。このデッキ1つあれば、毎日放課後に遊ぶ友達との対戦がぐっと楽しくなる。
それと比べて、ムシキングに400円を入れるとして、遊んだことがないので分からないが、おそらく1時間も
遊べないだろう。そう考えると、とても遊ぼうとは思えなかったし、同じ理由で親に100円を出してもらうのも
気が引けた。もちろん、アーケードカードゲームを否定したいわけではない。むしろ、今はゲームセンターが
好きだ。時間があればカードを含めた色々なゲームをプレイしている。ただ、小学生の時の自分には、
100円に見合う価値がなかったというだけだ。
 

 当時と比べ自由にできるお金が増えた今でも、この時の感覚は、自分の中に生きている。10円レアや
アンコモンを軸にして面白いデッキは組めないかといつも考えているし、500円を超えるカードを買うときは、
少なくとも数分悩む。だからこそ、たまに奮発して高額カードを買うと、なんとも言えない満足感がある。
自分にとっての最高の切り札は、あの時から変わらず「邪眼皇ロマノフI世」だ。この感覚は、自分が好きな
カードを好きなだけ使える環境にあったら、得られなかったものだろう。ましてそれを売ってお金を得られると
なったらなおさらだ。400円でどれだけ遊べるかを知っているから、それを基準に金銭感覚が養われた。
使い込んだカードがあるから、世の中にはお金に換えられない物があると胸を張って言える。もちろん、子
供のころから最強格のデッキを使ってガチの勝負をすることで得られるものも多いだろう。集中力、思考力
などが挙げられるだろうか。小さいころから大金に触れることも、資本主義社会の中では正解なのかもしれない。
 

 ここまでに見てきたように、カードは子供に多くのことを教えてくれる。そのことを、カードゲームをする
お子さんを持つ保護者方に知ってもらいたい。そもそも子供は、おもちゃを買って欲しいと泣きつくのを親
が拒否するだけで、何かを失い、何かを得ていく。あらゆることから何かを学び、影響されていく。まして、
本気で打ち込めて、かつ「対人」ゲームであるTCGから学べることは膨大だ。そして、同じくらい悪影響
を受ける可能性も否定できない。現に自分は、カードゲームのおかげで他人と話せるようになり救われた人
間と、カードゲームで盗癖がついて荒れていった人間の両方を知っている。だからこそ、保護者の方には、
カードゲームを単なる遊びと見て静観するのではなく、お子さんとカードゲームとの関わり方について
考えていただきたいのだ。カードゲームをプレイされたことのない方はもちろん、カードゲームをプレイ
している方にも真剣に考えて欲しい。家にあるカードをお子さんに使わせるのか。余ったり使わなくな
ったりしたカードをどうするか。大したことではないように見えて、実は大きくお子さんの将来に関わるはずだ。
だからこそ、お子さんにどう育って欲しいか、どういう力を伸ばしたいかを考えて決めていただきたい。
 

最後に、カードゲームをやったことがある方にも、そうでない方にもオススメの遊びがある。
「10円チャンピオンレース」とでも名付けようか。まず、専用の大きいカードケースを1つずつ
用意する。100円ショップのもので十分。そうしたら、近場のカードショップに行き、1枚10円コ
ーナーにあるカードでデッキを組んで会計し、それで対戦する。以降は、何かルールを決めてカードを
買い足す。月に100円までや、累計5敗する度に20円分など、枚数を絞った方がいいだろう。
最初のデッキと買い足したカードはすべて専用ケースに入れておき、以後ケースのカードは
自由に使っていい。これなら初期投資は40枚デッキなら2人で1080円と少額。
かつ意外と頭を使って楽しいので是非試してもらいたい。



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